015:臨場★★★

 終身検視官の異名を持つ倉石義男の登場する連作短編ミステリ。
 本格ミステリ大賞の候補作品の一つに選ばれた際に、その選考委員の一人が、「私は本格ミステリしか読まない。この臨場は、本格ミステリではないから読まないが、そうすると、すべての候補作品を読んでいないことになるため、選考委員としての最低の責務を全うすることができない。よって、今年は選考委員として白票を投じる。」という選評、(というか選考辞退の評)を読んだ記憶があったので、ある種の方には本格ミステリではないのね、ということを思い出して読んだ。
 本格かどうか、ということが問題となれば、どうなのか知らんが、結構面白く読んだ。そのうち2編目は、以前、本格推理傑作選とかの、アンソロジーで読んだ記憶があったが、それでも楽しく読めた。また、筆の力ということで言えば、冒頭の首を括られて殺されるシーンなど、現在新聞に連載小説を掲載している直木賞の選考委員のお一人より、よほどうまくかけている気がする。
 なお、仙台は、「餞」と題する短編の中で、刑事部長の娘の嫁ぎ先として選ばれている。
この刑事部長の住処は、地方のL県であり、長男は東京で旅行添乗員をしており、娘は仙台にいることとされている。
133 美佳は嫁ぎ先の仙台に定住の構えだ。
157 仙台から美佳が改まった声で電話を寄越したと思ったら、・・・