ほうかご探偵隊 (ミステリーランド)★★★★

「そうか、僕も大好きなんだよ。面白いもんね。僕は得に、怪人二十面相が好きなんだ。だってほら、怪人二十面相って毎回大仕掛けの犯罪をたくらむよね、凝った変装したりしてさ、宇宙人や鉄人やロボットに化けてね。でも、そういう扮装は、時に明智探偵や小林少年や、それから少年探偵団のメンバーをびっくりさせるためだけにすることがあるだろう。彼らを驚かすためだけに、大変な手間とお金をかけて鉄人や宇宙人に化けるんだよ。それで、目撃されるタイミングまでじっと隠れて、待機してたりするんだよね。そりゃまあ、明智探偵の側から見れば『あの奇怪な怪人物の姿は、あれこそ怪人二十面相の変装した姿だったのだ。我々を驚かせて怪物の姿を印象づけるために、君があそこを通りかかるのを待って、扮装したあの格好で現れたわけなのだ。』っていう説明ですむけどさ、あれって二十面相の側から見れば、目撃してもらうためにじっと待ってなくちゃいけないんだよね。しかも待っている間は、鉄人や宇宙人の着ぐるみ着たまんまだ。この待ってる時間の怪人二十面相を想像するとなんだかちょっとかわいいよな。」(pp30-31)
「着ぐるみ姿の大の大人が、じっと隠れて待っているんだぜ。その間、何を考えてたんだろうね。腹減ったなあ、とか、早く来ないかな、とか考えてたのかもしれないな。でも、やっぱりちゃんと、じっとマジメに待ってるわけなんだ、着ぐるみ着たままでさ。その無意味な情熱はなんなんだって思っちゃうよ。けどさ、そういう無意味なことに、全身全霊で取り組むってところがいいよね。凄くカッコいいと思うよ、怪人二十面相。僕は大好きだな。・」(p31)
・・・龍之介くんはかなり変。怪人二十面相が着ぐるみ着てじっと出番を待っている姿を想像し、その無意味なことに全身全霊で取り組んでいるからこそ、その怪人二十面相をカッコいいというところが、かなりに変わった感覚の持ち主。静岡の人ってこんななのか?

作者は子供の言葉を使った書きぶりが本当にうまい。ネコマルタロー君とジロー君の漫談の様子とかでもそれは感じていたが。下記などは、その一例。
「・・それでね、それでね、猫ちゃんと仲良しなのが、あと誰だか教えてあげようか。猫ちゃんと仲良しなのはね、竹山さんちのおふとんくんなんだよ。竹山さんちはよくおふとん干しててね、それでね、猫ちゃんは仲良しだから、おふとんくんと一緒にお昼寝したいんだよ、いいお天気だときっと気持ちがいいんだね。けどね、竹山さんちのおばさんはね、猫ちゃんがおふとんくんと仲良くするのを嫌がるんだよ。だからね、猫ちゃんが来ると怒るんだよ。・・・」(P173)

挿絵も可愛い。